以前ある病院で内臓脂肪をCTを使って測定して貰った事があった。確か1万円ぐらいの費用が必要だったはずである。お臍の位置をスライスした2DのCT画像から専用の内臓脂肪検出ソフトを使い自動的に内臓脂肪が割り出される。本来はお腹全体の内臓脂肪を3Dにして体積で算出しないと正確な脂肪量は割り出せないが時間と費用の問題からお臍の位置でスライスした一枚を使い面積で代表させている。

メタボリックシンドロームの基準では男性でその面積が100cm2以上で内臓脂肪型肥満とされている。お臍で輪切りにしたCT画像は輝度情報しか持っていないためCT画像では脂肪を黒い部分、輝度値0-255のうち輝度がある閾値以下の暗い部分を検出することで他の臓器から分離して面積を計算する。

閾値を決めるアルゴリズムは色々考えられているようであるが脂肪がCTで描き出す輝度情報は絶対値で決まるわけでなく撮影の条件により極めて相対的な情報である。よくよく見ればこの暗い部分が臓器の組織か内臓脂肪かかなり怪しいのである。閾値を決めるアルゴリズムと撮影条件でかなり内臓脂肪面積はゆらぐはずである。一億円以上もするCTを使いX線の被爆リスクを負って撮影した割にはそうとう心許ない面積値なのだ。

また最近ではCTの被爆の問題もありより安全に撮影できるMRIを使う事も多くなったようである。ただCT同様高価な装置であることには違がないが。またMRIで撮影された脂肪はCTとは逆に白く出てくるが脂肪を0-255の輝度値のある閾値以上と定義しなくてはならないのは同じである。またMRIはCT程距離分解はないようだ。

今回MRIを使える機会を頂いたのでお臍の位置で輪切りにしたMRI画像から閾値を決めるアルゴリズムが一緒でもMRIの撮影条件で内臓脂肪面積は変わってしまうということを示して見たいと思う。

撮影に使ったMRI装置

明らかに内臓脂肪と解るのは両側面に位置する一様な面積だ。

そこでこの面積部分のヒストグラムから輝度の平均値を求め1標準偏差だけ輝度が下がった輝度値以上を内臓脂肪と定義する。もちろん2標準偏差以上でも3標準偏差以上でもありえるがここでは正しい閾値を見つけることでなく閾値を決めるアルゴリズムを一緒して撮影画像のバラツキによる影響を観てみたいと思う。両側の面積はImageJを使って予め計算しておく。

次は内臓がひしめく内側の部分である。最初に面積を計算しておき、ヒストグラムから上記で決めた閾値を使い内臓脂肪とした輝度の数を数える。ImageJのLIST機能で輝度値の頻度数をエクセルに落とし、脂肪とされるある閾値以上の頻度数を全頻度数で割り、内側面積と掛け合わせて内臓脂肪面積を算出した。上記外側の面積と足し合わせれば内臓脂肪面積が算出できる。

単に計算だけでは分かりにくいため内側と外側の面積部分を選択して上記閾値以上で2値化すると下のような白抜きが作れ内臓脂肪とする部分が解りやすい。

白黒は逆転しているがCTでは信頼できるソフト?とされるソフトで自動的に算出された内臓脂肪面積102.5cm2.

今回の右側では135.23cm2となった。もちろんこの間8年程経過しているので内臓脂肪が増えている可能性もあり見かけ上は正しようにも見える。

下は被験者は同じで日を改めて同じように撮影した。ただし撮影のパラメーターは異なっているが臍の位置のスライスは同じである。

外側面積と閾値の算出は同じである。

内側の面積

2値化後の画像

MRI画像撮影のバラツキで閾値算出アルゴリズムが一緒でも内臓脂肪面積は今回98.22cm2となった。30%弱の少なさだ。

腹囲は79.8cmに対して今回81cm程度であった。

内臓脂肪を体積で把握するのは到底不可能であろう。お臍の位置のスライス一枚の面積で代表させるのも体積の一部の参照ポイントにすぎず位置が僅かずれるだけで相当バラツクであろう事は想像できる。さらに撮影の条件が統一されているわけでもない。また算出アルゴリズムも決まって居るわけでもなくそれぞれの施設が市販のソフトか装置メーカーに提供されたソフトを使っているに違いない。メタボ基準の100cm2だけが一人歩きしているようにも見える。さらにCTは被爆の問題がありMRIも高価な装置である。それでもインピーダンス法のような間接的に内臓脂肪を測るよりは内臓脂肪を非侵襲的に直接観れる効果は大きいようだ。

我々はと言えばエコーによって腹膜前内臓脂肪厚を測るのが簡易で良いと考えている。CT法やMRI法が内臓脂肪体積を一部の面積で代表させているようにエコー法ではさらに厚みだけで代表させている。エコー法は真の内臓脂肪量と相関させるのは難しいと思われる(CT法やMRI法でもそれに関しては同じであるようにも思えるのだが)がシンプルな方法なので安定して測定できるメリットがある。おそらくCT法と相関を取ったとしてもCT法が安定して測れる補償はない現状ではあまり意味があるとは思えない。

腹膜前内臓脂肪厚はどこに位置する内臓脂肪であろうか。MRIから位置が特定できる。

肝臓の前面に剣状突起に向かって心臓方向に沿って貯まった内臓脂肪をエコーで厚みを測るのだ。

肝臓前面で腹直筋の間に白線が見えるが白線下の肥厚がmaxになる。

このようにエコーで観る内臓脂肪はMRIでも安定した位置に蓄積していることが解る。

PFTを使って内臓脂肪を評価する方法などはPFTに関するページを参照の事